30歳年収500万×2の共働きで今後子供も欲しい場合の住宅ローンは?
最近は夫婦ともにフルタイムの正社員で年収面で差がないカップルが増えてきています。夫婦が共有名義で住宅ローンを組むことで、ワンランク上のマイホームを購入できるというメリットがあります。
例えば夫婦がそれぞれ年収500万なら合算で1000万円です。1000万円といえば、高年収の典型例ですが、この年収1000万円の人と同じ金額の住宅ローンを組むことができます。
ただし単独の年収で1000万円という場合と、500万を二人合わせて1000万円の場合とでは、金額面では同じですがリスクの傾向が違ってきます。
そのリスクを正しく把握して、それに合わせた対策をとるようにしてください。では今日のご相談者です。
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相談:30歳共働き夫婦が少し高めの物件を買うベストな住宅ローンは?
令和元年元日に入籍し、現在、新婚約半年です。当初は東京オリンピック後を見据えて、頭金を2割程度貯めつつ、新築価格の反落を期待しておりました。
しかし希望エリアで新築マンションの供給が少なく、私達の年齢を踏まえ、超低金利の今こそ長期固定で住宅ローンを組んで、少し背伸びしてみようという結論に至りました。
先日、手付金を支払い、売買契約を済ませたところで、フラット35を中心に住宅ローンの契約を目指しております。理想的な住宅ローンプランをご掲示頂けますと幸いです。宜しくお願い致します。
家族の年齢と年収 | 年齢: 夫)29歳 妻)30歳 年収: 夫)550万円 妻)500万円 |
自己資金の額 | 600万円(両親援助含む) |
物件価格 | 5,787万円 |
物件のタイプ | 大手デベロッパーの新築マンション2021/01引き渡し予定 |
借入予定額 | 5,200から5,500万円 |
住宅ローン | フラット35(ボーナス払いナシ)が第一希望。提携ローンは3社ありまして、いずれもフラット35による借入れのため、特段、手数料の割引きはないとの事でした。 全てから承認頂いております。結果、一社のみ本審査に進めるとの事で、本審査の申込み手続きを販売会社経由で行いました。 |
相談内容 | 30代共働き夫婦で、今後子供二人(予定)で、妻も定年まで正社員で働く前提とした場合、理想的な住宅ローンをご教示頂けますと幸いです。 |
回答①:金額面のリスクはMAXレベルです
ご相談に少し背伸びをして、と書かれていますが確かに金額面において、身の丈を超えた住宅ローンとなっています。しかし、それでも住宅ローンの審査に問題なく通るのは夫婦の収入を合算しているためです。
では、無理なく返済できる住宅ローンの金額からどの程度乖離しているのか?を確認しておきましょう。以下の4つのルールを当てはめることを推奨しています。
- 毎月の返済額は手取り月収の4割以下、ボーナス払いなし
- 元利均等返済方式
- シミュレーションは固定金利
- 定年時残高は1千万円以下
これを具体的に当てはめた年収ごと、年齢ごとの住宅ローンの金額は以下のようになります。
(単位:万円)
年収 | 月収 | 25歳 | 30歳 |
300万 | 15万 | 2056 | 2056 |
400万 | 20万 | 2742 | 2742 |
600万 | 25万 | 3428 | 3428 |
700万 | 30万 | 4113 | 4113 |
900万 | 35万 | 4799 | 4799 |
1000万 | 40万 | 5485 | 5485 |
単独で住宅ローンを組むのであれば年収500万円ですから、2742万円と3428万円の中間で3085万円が妥当な金額ということになります。
しかし、実際には夫婦が協力して住宅ローンを返済していくということで年収1000万円のところを見ると5485万円でも妥当ということになります。
ただしこれは夫婦の婚姻が継続し、かつ、両方の安定収入が続くという2つの前提のうち一つでも崩れると成立しないことです。この2つは当たり前の前提ではなく、たゆまぬ努力と幸運のたまものですよ。
かなりリスクの高い住宅ローンです。かといって3000万円にすべきとは思いません。現時点では夫婦が収入を合算して返済していくという実態があるからです。
とはいえ、今後35年にわたりそれが続くことを当然の前提と考えるのは、楽観的に過ぎます。
そのため、このようなケースでは3085万円と5485万円の中間あたり、つまり4285万円あたりにしておくことをおすすめするのですが、すでに購入を決めておられます。
前提として高いリスクのある住宅ローンとなっており、相応の準備と覚悟をもってあたらなければならないということを肝に銘じておいてください。
このようなことは不動産の営業マンは言わないはずです。当然彼らは売ることが仕事です。審査にさえ通れば何だっていいのです。
また、審査を通す提携ローンの金融機関にとって当該大手デベロッパーは大口顧客です。少々危ないかも?と思っても顧客の売り上げのために可能な限り便宜をはかります。
次はどのようなリスクがあり、どういう対策をすべきか解説します。
回答②:具体的な注意点とその対策
住宅ローンの実行が今から1年後ということもありますので、具体的な注意点とその対策については、住宅ローンの実行前と後に分けて解説します。
実行前に妻が妊娠すると審査に通らなくなる可能性がある
いきなりセンシティブな話ですが、妊娠についてです。仮審査では健康状態についてまでは審査の対象とはしないことが多いです。
対して、妊娠と出産については、生命のリスクが伴います。金融機関によっては妊娠している場合は住宅ローンの債務者または保証人になることができないというケースもあります。
住宅ローンの審査は結果しか伝えられませんので、『あなたは妊婦ですから』ということを言われることはありませんが、とにかく審査の結果として「謝絶」ということしか教えてもらえません。
現時点において、どの金融機関が妊婦を不可としているのか?というのはわかりません。審査の基準というのは随時、見直されていきます。
実行までの間に1年の期間がありますので、仮審査に通っているのに本審査に通らないという要素はそれだけではありません。
新たな借り入れや滞納はもちろんダメですが、金利の上昇も影響します。金利が上がると、毎月の返済額が増えるのでそれによって融資可能額の上限が下がってしまうことがあります。
実行前に貯金を増やして自己資金を厚くしておく
対策としては、できるだけ貯蓄を増やしておくことです。とてもシンプルです。
もし、奥様が妊娠し、金融機関が奥様を債務者ないし保証人とすることに難色を示すような事態となった場合にも、ご主人単独でもギリギリ融資が可能という状況にしておけばキャンセルせずに済みますよね。
また、金利が上がったことによって仮審査のときよりも融資可能額の上限が下がってしまった場合でも、その分を頭金で多く出せるようにしておけば、キャンセルせずに済みます。
実行後はオーバーローンに注意
夫婦の共有名義で住宅ローンを組む場合は、次の2つの前提のどちらかがなくなると売却して住宅ローンをチャラにする必要があります。
- 婚姻の継続
- 夫婦両方の安定収入
売却して住宅ローンをゼロにするには、売却時点の家の市場価格よりも住宅ローンの残高が小さくなくてはなりません。
金融機関は対象の不動産を処分した代金で住宅ローンを回収できるようにする権利として抵当権を設定していますので、住宅ローンの残高よりも安い値段で売るのであれば、了承してくれないのです。
もしも、金融機関に黙って強引に売ってしまおうとしても、金融機関は設定した抵当権を外してくれませんから、買主はそんな物件は買わないということになります。
もしも、売却時点の家の売却価格よりも住宅ローンの残高が大きい=オーバーローンの場合は、金融機関に住宅ローンを完済するために余分にお金が必要です。お金が無ければノンバンクなどで別途借金をする必要があります。
さらに、物件の売却にはそれを仲介する不動産業者に3%+6.6万円の仲介手数料を支払わなくてはなりません。それもお金がなければ借金です。
実行後はオーバーローンに気を配る
私は単独で住宅ローンを借りるケースでは「オーバーローン」についてはそれほど気にしなくていいですよと言ってます。
住宅ローンは毎月の返済を続けられる限り、オーバーローンになっても何の問題も無いからです。
しかし、夫婦の共有名義の場合については、その前提が崩れた場合に、すぐ売却してリスタートがしやすい状態にしておくことをお勧めします。
オーバーローンにならないように、購入後に近隣価格の相場をチェックしておく、下回っている場合は貯蓄でカバーできるようにしておくことが、オーバーローンへの対策となります。
なお、当初の10年は住宅ローン控除がありますので、繰り上げ返済するのではなく、貯蓄を増やす方に専念することをお勧めします。
まとめ~住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本
おそらく、ご相談で想定されていたのは、具体的な金利タイプとかお勧めの金融機関の商品であったのではないか?と思います。回答とは異なる切り口での回答となりました。
ただ、現時点から1年ちかく先の実行ということになると、金利情勢も今とは全く違うものになる可能性も否定できません。そうなると、前提も全く変わってくるでしょう。
営業マンはもう今から「本審査はどこにします?」みたいな方向で進めていますが、私に言わせればまだそんな段階ではないです。先にすべて固めてしまってラクをしたいという下心が見え見えです。
住宅ローンのイニシアチブについては、何とか自分の方に引き寄せるようにしてください。
そして、引き続き金利動向や住宅ローンの商品について情報収集を続けることをお勧めします。
この2020年1月末に発売となりました住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本では、損をしない住宅ローンの決め方や、今回の50:50の共働き夫婦の住宅ローンの注意点について、かなり詳しく書いていますのでよかったらお手にとって読んでいただければ嬉しいです。