30代で世帯年収2000万の共働き夫婦に最適な住宅ローン

2024年5月8日

結婚後も女性が働きやすい環境が整えられてきており、夫婦ともに高年収の共働き夫婦が増えています。しかし、出産や子育てを控えている若い夫婦の場合は、妻が職場を離れた後の収入減についても、頭に入れておかなければなりません。

今日は30代前半で夫婦がそれぞれ年収1000万円(世帯年収2000万円)の方からのご相談です。今回から回答を千日太郎YouTubeチャンネルで行っています。チャンネル登録と更新通知(すべて)を設定すれば最新の動画を見逃しません。

【無料相談】30代で世帯年収2000万の共働き夫婦に最適な住宅ローンとは?|千日太郎YouTube動画へ

YouTubeでは主に質的な側面から回答しています。データの分析や量的な側面からの解説については、こちらのブログの記事を参照してください。

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相談者のデータ(年齢、年収、自己資金、物件価格、借入金額など)

家族の年齢と年収夫(32歳):年収1000万円(基本給800万円)
妻(33歳):年収1000万円(基本給650万円)
子供:現時点では無し(予定あり)
自己資金の額500万円
物件価格7580万円
物件のタイプ都心部の駅チカの中古マンション(住宅ローン控除対象物件)
借入予定額ペアローン夫4780万円・妻2800万円
住宅ローン民間金融機関の変動金利の35年ローンを考えています。疾病保障特約はつけず、生命保険に別途加入して万が一のリスクへの対応していく方法を考えています。
相談内容・どういったローンの組み方が一番最適か?
・年収に対して背伸びしすぎている物件ではないか?

回答①50:50の高収入共働き夫婦の借入金額の考え方

ご相談者のように夫婦の収入がほぼ同じくらい(50:50)で共有名義で住宅ローンを組む場合の注意点については、2020年2月に出版しました住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本で詳しく解説しています。以下、その本の内容に当てはめて解説します。

無理なく返済できる住宅ローンの金額を計算するためのシミュレーション4つのルール

私は著書やブログで以下の4つのルールにあてはめて、無理なく返済できる住宅ローンを計算することをお勧めしています。

  1. 毎月の返済は「手取り月収の4割以下でボーナス払いなし」
  2. 返済額が一定になる「元利均等返済方式」
  3. シミュレーションの金利は「固定金利」
  4. 定年時のローン残高は「1000万円以下」

それを、年齢と年収におおむね当てはめた表が以下のようになります。

(単位:万円)

年収月収30歳35歳
300万15万20562056
400万20万27422742
600万25万34283320
700万30万41133890
900万35万47994410
1000万40万54854910
1200万50万85707968

注:年収1200万円は「1.手取り月収の5割以下」「4.定年時のローン残高は2000万円以下」としています。この年収を超えたあたりからは、一律のルールを当てはめても妥当な金額は見込めないでしょう。

ペアローンの連帯保証と適正借り入れ額の考え方

ペアローンはそれぞれの所有権の持ち分に応じた債務の金額で別々に住宅ローンを借りるということになります。しかし、夫婦がそれぞれお互いのローンを連帯保証することになりますので、結局のところお互いに住宅ローン全額の責任を負うことになります。

ですから、一番安心な金額というのは、夫婦それぞれが単独で完済できるような金額に抑えておくことということになります。

最も低い場合を前提として、35歳基本給650万円の妻単独で返済することを想定すれば約3500万円くらいです。しかし、これは実質的に夫婦2人の収入で返済していくという前提を無視した、過度に保守的な数字です。

一方で最も高い場合を前提とすれば、二人の基本給合計1450万円で返済することを前提にすると、この表を超えたところになります。1000万円のところを2倍すると、おおむね1億円になりますね。つまり理論的には、1億でも返済できるということになります。

しかし、これは夫婦の両方が定年までフルに働くことを前提にしたものです。今後は出産も予定されていますし、そもそも夫婦には離婚の可能性があります。

夫婦の共有名義での住宅ローンは「①夫婦両方の安定収入」「②婚姻の継続」という2つの大前提のものに成り立っているのですが、これは当たり前の前提ではなく、今後のたゆまぬ努力と幸運のたまものです。

ご相談者の場合は、3500万と1億の間に適正な金額があります。目安は両者の中間額の6750万円です。目安としてこれを超えた分だけリスクが上乗せとなっていると考えればよいでしょう。

ペアローンの大敵はオーバーローン

住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本でも詳しく解説していますが、夫婦の共有名義で住宅ローンを組む場合は、離婚による財産分与で出てくる問題点について把握しておく必要があります。

字数に限りがありますのでここでは端折りますが、住宅ローンがある場合の財産分与について弁護士さんなど、信頼できる人が公開している情報を確認しておいてください。

住宅ローンを共有名義にしている場合に、最も財産分与でもめるのは「住宅ローンの残高が物件の売却価格を超える(以下「オーバーローン」といいます)」ケースなのです。

オーバーローンを防止するには、頭金です。ご両親などから援助が受けられないか検討してみてください。住宅購入資金の贈与を受ける場合は非課税枠が拡大されています。契約時期にもよりますが今なら700万円以上の非課税枠がありますのでうまく利用してください。

購入の時点で頭金を入れられないならば、その後の貯蓄を増やすことでも対応できます。家計を見直し、計画的に貯蓄を増やすようにしてください。まず最初の目標は60歳残高です。

回答②具体的な住宅ローンの借入額と金利タイプについてのアドバイス

まず、ペアローンでの夫婦それぞれの借入額については、ちょうど良い塩梅になっていると思います。

住宅ローン控除で損しない借入額

住宅ローン控除とは、年末時点での住宅ローン残高の最大1%がその年の所得税等から最大10回(または13回)キャッシュバック(還付)される減税制度です。ただし物件によっても上限が違いますので注意が必要です。

2020年住宅ローン控除の条件をわかりやすく説明|新築,中古,増改築|千日のブログへ移動

対象の中古マンションの住宅ローン控除の上限は年20万円です。つまり、ローン残高に割り戻すと2000万円が上限です。ご相談者の妻の借り入れを2800万とすれば、10年後の残高は2000万円ちょっとになる計算ですね。

10年間で最大の200万円の住宅ローン控除を受けられる金額になっており、問題ないと思います。2000万円をスタートとする考え方もありますが、さほど気にするほどの差にはなりません。

また、あまり妻の住宅ローンの借り入れを下げすぎると、次に述べる印紙税で4万円損をする可能性が出てきます。

印紙税で損しない借入額

ペアローンは夫婦がそれぞれ住宅ローン契約を締結する方法です。以下のように住宅ローンの金額によって印紙税が増えるので注意が必要です。

  • 1000万円超5000万円以下:印紙税2万円
  • 5000万円超1億円以下:印紙税6万円

夫の借入額が5000万を超えると印紙税が6万円となってしまいますね。それに妻の印紙税が2万円を加えて合計8万円の印紙税となります。ご相談者は夫の借り入れを4780万円としていますので、印紙税は夫婦あわせて4万円で済みます。

これだけで4万円も節税できるのですね。ペアローンで住宅ローンを借りる場合は、総額が1億円以下であれば、上記の方法で4万円の節税が可能ですので知っておいて損はないですね。

今回のご相談者の場合、夫を5000万にして、妻を2580万円とするのも悪くない方法です。

変動金利で一般団信かフラット35で団信不加入か

年齢がお若いですから病気のリスクは低いです。そのため、団信の疾病保障などは付けずに別途で生命保険に入るのは、合理的な選択です。

もう一つの選択肢としてご提案するのはフラット35で団信に不加入として金利を変動に近い低金利にしつつ、団信の生命保険は別途加入する生命保険でカバーしてしまうという選択です。

フラット35で団信を抜くと団信込みの金利から0.2%の引き下げとなります。さらに「S」の適用があれば中古マンションでも当初5年は0.25%引き下げとなります。この金利引き下げになるかどうか?は住宅金融支援機構のHPからも簡単に検索できます。

中古マンションらくらくフラット35検索|住宅金融支援機構のHPへ

さらにアルヒのスーパーフラットという商品の場合、団信不加入とすることで、0.28%の引き下げになります。通常は0.2%ですから、団信抜きにするならアルヒスーパーフラット一択です。

そこで以下の2パターンで比較を行います。

  • 変動金利:0.5%で7580万円を35年元利均等返済、ボーナス払いなし
  • アルヒスーパーフラット9S:当初5年は0.66%その後0.91%で頭金1割入れて6822万円を35年元利均等返済、ボーナス払いなし

資金繰り面の比較

(単位:円)


物件7580万円
変動金利
7580万円
0.5%
アルヒスーパーフラット9S
6822万円
0.66%→0.91%
差異
頭金0 7,580,000 -7,580,000
5年の毎月返済196,765181,95514,810
6年目~毎月返済196,765188,6458,120
28年後残高16,239,16615,346,498892,668
33年後残高4,697,9554,484,919213,036

頭金を1割入れることで、毎月の返済額は変動金利の場合よりも安くなるんですね。加えてもちろん、金利の上昇リスクは無いです。

借入費用の比較

(単位:円)


物件7580万円
変動金利アルヒスーパーフラット9S差異
印紙40,20040,2000
登録免許税75,80068,2207,580
事務手数料1,667,6001,667,6000
司法書士報酬60,00060,0000
その他055,000-55,000
合計1,870,8001,918,220-47,420

借り入れ費用について、両者に有意な差はありません。

総支払額の比較

(単位:円)


物件7580万円
変動金利アルヒスーパーフラット9S差異
借入費用1,870,8001,918,220-47,420
頭金07,580,000-7,580,000
28年返済額66,113,04062,983,3203,129,720
28年後残高16,239,16615,346,498892,668
住宅ローン減税-4,000,000 -4,000,000 0
合計80,223,006 83,828,038 -3,605,032

支払い総額では固定金利のアルヒスーパーフラット9Sの方が360万円ほど多くなりました。これは金利の上昇リスク分の保険料と考えるのですね。28年間=336か月で割ると、月に1万ほどの保険料となります。

また、現在は新型コロナウイルスのパンデミックリスクで長期金利はかなり下がっています。短期的にはフラット35がさらに下がる傾向にありますので、アルヒのスーパーフラットでも審査を通しておくと良いと思います。

まとめ~金額は大丈夫だがオーバーローンのケアを!

物件価格、借入金額としては収入に対して妥当な範囲であると思いますよ。ただしこれをペアローンで借りるのであれば、オーバーローンのリスクに対して十分な理解とその準備が必要だと思います。

単独で借りる場合はオーバーローンを気にしなくていいですよと言ってます。毎月の返済ができるなら、オーバーローンになっても別に困らないからです。しかし、ペアローンの場合は前述のようにオーバーローンへのケアが必要です。

例えばオーバーローンを無視したいのであれば、妻の方の住宅ローン控除の恩恵は捨てて、夫単独で借りるようにするのも一つの正解です。おそらくご主人単独でも融資可能でしょう。

以上、参考になれば幸いです。

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