コロナ緊急事態宣言を機に住宅ローン金利の見直し交渉

2020年9月2日

新型コロナウイルスの感染拡大から安倍首相が緊急事態宣言を発令しました。長期戦が予想されるなかで今後の収入減のリスクはすべての人に等しくあります。

一方で過去に住宅ローンを組んだ時点では、当然このような状況を想定していなかったのですから、相対的にすべての人が高いリスクを負っていることになります。

今日は2年前に変動金利で住宅ローンを組み、このコロナをきっかけに住宅ローンの借り換えを考えている方からのご相談です。回答は千日太郎YouTubeチャンネルでも行っています。チャンネル登録と更新通知(すべて)を設定すれば最新の動画を見逃しません。

YouTubeでは主に質的な側面から回答しています。データの分析や量的な側面からの解説については、こちらのブログの記事を参照してください。

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相談者のデータ(年齢、年収、自己資金、物件価格、借入金額など)

家族の年齢と年収夫30歳 職業 地方公務員 年収550万
妻33歳 職業 臨床検査技師 年収400万
子供 8ヶ月
自己資金の額400万円
物件価格5,640万円
物件のタイプ注文住宅
当初借入額5,640万円
当初の住宅ローン2018年10月実行の変動金利0.725%
交渉で0.625%へ引き下げできました。
検討中の住宅ローン現在残高5,438万円で残り33年です。
フラット35か?auじぶん銀行か?そのままか?

わたし達が借入した当時のフラット35は、35年固定で1.41%でした。今は1.3%と全期間固定のフラット35の金利が下がってきていますので、フラット35に借り換えすべきでしょうか?

それとも、新型コロナウイルスの状況をみると当分金利は上がりそうにないと思います。ならば、より低金利の変動金利に借換えすべきなのでしょうか?

また、千日さんのブログを参考に現在借りている銀行に金利交渉したところ、0.725%から0.625%に金利を下げるとの回答が得られました。

今の銀行の住宅ローンにはガン100%保障がついていますし、まだローン残高が大きいので借り換え手数料が高いことを考えると、今の銀行のままが良いのかとも思います。

回答①:金利交渉で90万円トクしている

私のブログでは、借り換えの際には同時進行で現在の銀行に金利交渉をすることをおススメしています。

交渉といっても何も難しいことではありません。自分の借りている銀行の最寄の支店または住宅ローンセンターなどに電話をして次のセリフを言うだけです。

「住宅ローンの金利を見直して欲しいのですが」

銀行員は優秀ですから、皆まで言わなくてもこれだけですべてを察して、動きます。「住宅ローンの金利を…」くらいでわかってくれます。

  • 金利を上げたい人はいない。下げてほしいと思っている。
  • そして、今の他行の金利は確かに数年前よりかなり下がっていて、ネットで公開されている。
  • ほとんどの人は借り換えた方がトクになる状態である。

これらのことは、すでに銀行の中の人は承知しています。お客が電話をかけてきて「住宅ローンの金利を…」とまで聞けば、何をしてほしいかすぐわかります。

そして、やることは単純です。この人が他行に借り換えたらいくらトクをするのか?また、何パーセントまでなら金利を下げてもいいか?を銀行のコンピュータで計算し、銀行内で決裁するのです。

それで出された回答が0.725%を0.625%に下げるというものでした。これによって今からローン完済までの総額でいくらのメリットがあるか?計算しました。

(単位:円)

5438万円
残り403回
金利引き下げ前0.725%金利引き下げ後0.625%交渉メリット
契約変更費用066,400-66,400
返済合計52,638,04356,015,859904,884
定年の60歳でその時点の残高を一括返済すると仮定

金利を変更するために数万円の手数料がかかりますが、それも込みのトータルで約90万円もトクしていますね。

たった一本の電話でこれだけ支払いを減らせるのです。この新型コロナウイルスでもらえるかどうかわからない補助金よりデカいです。知らない人がいたらぜひ教えてあげてください。

ちなみに今一番おトクな借り換え先の住宅ローンについて解説しておきましょう。

変動金利なら低金利かつ無料団信の保障が充実したauじぶん銀行がおすすめ

変動金利ならば低金利かつ無料団信にがん50%保障と全疾病保障が付帯するauじぶん銀行にも仮審査に通しておくことをおススメします。

仮審査の段階で個人信用情報を含めて審査の重要ポイントをチェックするので、これに通るということは、既存の銀行で金利引き下げに応じてもらえる可能性は高いためです。

そのため仮審査に通しておけば、より自信をもって金利交渉に臨むことができます。仮審査はネットだけで完結し、2~3日で結果が出ます。

今は新型コロナウイルスの感染拡大による影響があり、変動金利が史上最も下がっているタイミングですから、こちらにとって有利なタイミングです。経済がシュリンクしているときは、基本的に金利は下がりますからね。

フラット35ならアルヒスーパーフラットで低金利+融資手数料が半額

フラット35ならば、アルヒスーパーフラットや住信SBIネット銀行(保証型)が低金利でお勧めです。特に2020年4月現在ではアルヒで借り換えをweb申し込みすると手数料率が半額になるキャンペーンをやっています。

加えて、アルヒスーパーフラットは通常のフラット35から0.05%金利が引き下げとなっており、さらに団信不加入とすることで0.28%引き下げとなります。

通常のフラット35では団信抜きとすると、団信込みの金利から0.2%の引き下げなので、団信抜きにする場合はスーパーフラットをお勧めしています。

アルヒも同様に仮審査の段階で個人情報等の重要ポイントをチェックしますので、この仮審査に通るかどうかで金利引き下げ交渉の成否を判断できます。審査の結果は最短当日で出ます。

公務員や団体職員など、職場の福利厚生が充実している場合、病気になったときのサポートがあり、また、加入できる保険の条件も有利な場合があります。団信の代わりになる生命保険に加入し団信抜きにするというのもアリです。

回答②:実際にシミュレーション

既に527万円のトクが確定しているので、これで手を打つというのもアリです。しかし、上記2つの住宅ローンの審査に通ったなら、借り換えによってどれだけメリットがあるのか知っておきたいですよね。

そこで、下記の4パターンを比較します。

  1. 0.625%へ金利引き下げでそのまま借り続ける。
  2. ネット銀行の変動金利に借り換える。
  3. アルヒスーパーフラット借換(団信抜き)に借り換える。
  4. アルヒスーパーフラット借換(団信加入)に借り換える。

比較は以下の3つの切り口から行います。

  • 資金繰り面の比較
  • 借り換え費用の比較
  • 総支払額の比較

この住宅ローンシミュレーションのやりかたや、借り換えメリットの詳しい解説は、私の本住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本でも詳しく解説していますので、ぜひ読んでください。

今回はこのご相談者のケースに特化し、詳しい解説は端折っていきます。

資金繰り面の比較

(単位:円)

借り換え5438万円金利引き下げ
0.725%→0.625%
ネット銀行変動0.38%スーパーフラット借換0.97%スーパーフラット借換1.25%
毎月返済149,641146,135160,527167,658
60歳残高6,361,3995,230,1645,693,4445,920,907

借り換えることで少しだけ楽になるなという印象です。固定金利にするとちょっと毎月返済額は増えますね。

これは、借り換えによって残りの返済回数が少なくなるためです。どういうことかというと、この方の場合残りは403か月なのですが、借り換えするとそこから残りの期間は年単位で切り捨てになるからです。

403か月=33.5833333…年なのですが、この場合借り換え後の契約は33年となり、396か月に短縮されるのですね。そのため、毎月の返済額は大きくなりがちなのです。

その代わり、住宅ローンが減るペースは速くなりますので、60歳残高は小さくなっています。

このように、借り換えると毎月の返済額は増えることが多いので、資金繰り的にメリットがあるかの判断は注意が必要ですね。

借り換え費用の比較

(単位:円)

借り換え5438万円金利引き下げ
0.725%→0.625%
ネット銀行変動0.38%スーパーフラット借換0.97%スーパーフラット借換1.25%
印紙40040,00040,00040,000
登録免許税0213,920213,920213,920
融資手数料66,0001,176,560588,280588,280
司法書士報酬060,00060,00060,000
その他04,1394,1394,139
合計66,4001,494,619906,339906,339

ネット銀行は毎月の資金繰り面では楽になりますが、現時点で150万円ほどの出費が必要になります。

ちなみに借り換えにかかる融資手数料は融資金額に含めることができます。しかし、シミュレーションでそうすると、借入金額が変わってしまい比較が困難になるので、ここでは自己資金で払うこととしました。

総支払額の比較

(単位:円)

借り換え5438万円金利引き下げ
0.725%→0.625%
ネット銀行変動0.38%スーパーフラット借換0.97%スーパーフラット借換1.25%
借り換え費用66,4001,494,619906,339906,339
今後30年返済額53,870,76052,608,60057,789,72060,356,880
60歳残高6,361,3995,230,1645,693,4445,920,907
住宅ローン控除9年-4,282,700-4,248,700-4,300,100-4,323,600
合計56,015,85955,084,68360,089,40362,860,526
借り換えメリット0931,176-4,073,544-6,844,667

ネット銀行の変動に借り換えると30年で93万円トクをするということですね。その代わり、今の住宅ローンはガン100%保障がa銀行にすることでガン50%保障に減ってしまうのが難点です。

30年で93万円ということは、1月で2500円位です。金利の上昇リスクは変わらず、ガンの保障が減るのであれば、あまり割に合わない感じですね。借り換えはお勧めしません。

ネット銀行には全疾病保障がついていますが、今の医療現場で6か月入院が必要というハードルが高く、さらに病気のリスクが低い30代前半ではこれが決め手にはなりません。

スーパーフラット借換(団信抜き)の方は検討の価値があります。総支払額6,009万円となりますが、金利の上昇リスクもなくなります。

十分に低い金利で金利の上昇リスクを減らすことができます。これまでの最低金利は1.2%前後でしたから、それより0.1%高いだけですからね。

今はコロナで金利が上がることなんて考えられませんが、1年経過してワクチンができれば状況はまた変わってくることが考えられます。この緊急事態宣言下であっても、長期金利が上昇しているのですからね。

まとめ~住宅ローンという大航海で大後悔しないために

今の新型コロナウイルスの状況から変動金利を勧める専門家も多いです。どう考えても金利は上がりそうにないですよね。

しかし、住宅ローンの期間は最長で35年です。自分の今まで生きてきた期間と同じ位かそれを超える期間です。

自分が生まれたばかりの頃の社会と今の社会は全く違いますよね。住宅ローンは今ある前提がまったくアテにならないほどに長期間のプロジェクトなのです。

現時点で多くの専門家が提唱する正解が、5年後10年後の社会でも正解である保証はありません。

なので、私は住宅ローンの計画を立てるにあたって「未来はこうなるから(orこうはならないから)こういう住宅ローンの組み方がベスト」と完全に決め打ちするようなやり方はおススメしていません。それが外れてしまうと、大ケガをする可能性があるからです。

住宅ローンを選ぶことは、ゴールが目視できているようなヨットレースで勝つためのライン取りや風読みとは違います。しかし専門家も含めて多くの人がこのようなレベルで話をしているように思います。

本当に必要なのは、太平洋を横断するような大航海で自分と家族を全員生還させるための準備と舵取りなのです。

以上、参考になれば幸いです。

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